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カテゴリー「小説・エッセイ等」の記事一覧

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主人公の生き様に心を打たれる、圧巻の社会派作品/『沈まぬ太陽』山崎豊子著  


沈まぬ太陽 文庫 全5巻 完結セット (新潮文庫)沈まぬ太陽 文庫 全5巻 完結セット (新潮文庫)
(2002/01/01)
山崎 豊子

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故・山崎豊子氏の代表作。
1999年から5年にわたって「週刊新潮」に掲載された長編大作です。
ようやく2009年に渡辺謙さん主演で映画化されたのは記憶に新しいところ。

主人公、恩地の実直さ、強い正義心に心を打たれる


とても長いので、読むにも時間がかかりますが、圧巻の筆致力に心を揺さぶられます。
日航ジャンボ機墜落が物語の中心となりますが、詳細で克明な記述にぐいぐい読まされました。

作品の見所は、主人公・恩地の生き様と不条理な企業風土。
フィクションではありますが、主人公も会社も事故もすべて実在のモデルをもとに描かれています。
特に主人公のモデルの小倉寛太郎氏には、千数百時間におよぶ取材をしたそうです。
著者曰く、「事実を取材して小説的に再構築した人間ドラマ」とのこと。

本作は、アフリカ篇、御巣鷹山篇、会長室篇の3部作になっており、
それぞれ題材、雰囲気がガラッと変わりますが、あらすじはwikipediaで確認ください。

個人的には、主人公・恩地の強い正義心や強靭な精神力に、心を打たれました。
どんなに屈辱な目にあっても、頑として正義を全うする姿勢が、強烈に印象に残ります。
読了後は、性根を入れ替えさせられたような気持ちになりました。

日本航空(JAL)批判としての側面


本作品は、一読すればわかりますが、猛烈なJAL批判となっています。
著者が「事実を取材して小説的に再構築した」と言っているとおり、
物語で記述される出来事のほとんどがノンフィクションです。

脚色した部分も多分にあるはずですが、事実と創作とを見分けることは難しく、
それだけに、読者はモデルのJALの腐敗を目にしているように思うに違いありません。

当然のごとく、JALは本作品に不快感を示しているようで、
山崎作品の中で最も映像化が遅れたのは、そうした背景があってのことです。
逆に言えば、映画化をした角川映画、さらにさかのぼれば、
連載をした週刊新潮は、かなり勇気のある決断をしたと言えるのでしょう。

ただ、作品の描写の仕方に関して言えば、賛否がわかれるところ。
多くの人命を預かる航空会社の企業倫理の欠如を暴いた名作と評価する声がある一方、
JAL批判に偏向している、主人公を美化しすぎている、といった意見も多く見かけます。

参考①
労使の深い溝 「沈まぬ太陽」はどこまで本当か(朝日新聞GLOBE)
小説と同様、実際のJALにおける労働組合の混迷がよくわかります。
労使関係にまつわる社内の派閥争いは、JALの“お家芸”とも言われているとか。

参考②
「沈まぬ太陽」は100%フィクション(池田信夫ブログ)
実際の小倉氏の人間像は小説と異なり、JALにおける労組の罪は重いと主張。
公開された映画は、JALと無関係のフィクションとして鑑賞するようにと勧めています。
まぁ、100%フィクションとして観るのは難しいでしょうが。

巨象となった組織への批判と捉えるべき


個人的には、あとがきに書かれた著者の言葉が印象的です。
「巨大な組織であり、政治と結びついている航空会社の力は、
予想を遥かに越え、個人の力など巨象の前の蟻に等しい。一時は挫折しそうになった。」

個人があっての組織だろうと思うのですが、
巨象のような組織にとっては、組織があっての個人という論理が常識となっています。
これはJALに限ったことではないことは、企業の不正が絶えないことからも明白です。

本作品は、そうした不条理に無自覚である“巨象”への批判と受け止めるべきだと思います。
現代においても、とても意義のある作品であり、サラリーマンなら一読しておきたい作品です。


おまけ
日航ジャンボ機墜落関連では、映画『クライマーズ・ハイ』もオススメです。

クライマーズ・ハイ [DVD]クライマーズ・ハイ [DVD]
(2011/10/26)
堤 真一、堺 雅人 他

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横山秀夫原作。事故現場となった群馬の地元新聞記者たちの熱いドラマです。
堤真一、堺雅人がカッコいい。売れる前の尾野真千子や、滝藤賢一も重要キャストに抜擢されています。

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category: 小説・エッセイ等

thread: 最近読んだ本

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ベイジン/真山仁  


ベイジン〈上〉 (幻冬舎文庫)ベイジン〈上〉 (幻冬舎文庫)
(2010/04)
真山 仁

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経済成長にも陰りが見え始め、いまや世界経済の大きなリスクと思われ始めている中国。
そんな中国という国家の危うさを、正面から描いた社会派小説が、この『ベイジン』です。
仕事に熱い人々の繰り広げるドラマティックな展開に興奮すること間違いなし。一気に読めます。
ちなみに、「ベイジン」とは、北京(英語でBeijing)のことです。

あらすじ


北京オリンピックにあわせて、世界最大規模の原子力発電所を始動する―。
そんな至上命題を掲げた中国政府のもとで、各々の職務に奔走する人々を描いています。

中国は、核保有国でありながら、独力で原発を建設する技術を持っていない。
そのため、表向きは国産の原発とうたっていながらも、日本などの技術供与を必要とします。
作品では、中国の国有企業集団による原発建設プロジェクトの技術顧問として着任した日本人(田嶋)の視点から、杜撰な中国の管理体制が次々と明らかになっていきます。

もう一人の主役であり、この国家プロジェクトの責任者という大役を任された中国人(鄧)は、政治家の不正を暴く中央規律検査委員会の副書記(≒スパイ)としてのウラの顔を持っています。
富の偏在が顕著な中国社会において、贅沢の限りを尽くす政治家の腐敗ぶりが描かれます。

二つの視点から共通して見えてくるのは、中国の「面子」への意識です。
小説内でも、鄧の上司が「中国の面子」の説明として、次のように述べています。
「どれほど中が腐っていようと、外観は華麗さを保つこと」
威光ばかりを求めて先走る、中国の腐敗した内面の実態を象徴した言葉だと思います。

中国というのは、強大な自尊心をもとに明らかに身の丈にあわない外観を誇示しながら、その辻褄合わせのために国全体で粉飾をしているような国家です。
決して謝らないし、自己批判もしない。それが中国の国民性だそうです。
そんな中国が推進する原発プロジェクトの運命の行末を、小説ではドラマティックに描き出しています。

感想


真山氏は、自分の不得手な分野をテーマに選ぶようにしている、と言っていたことがあります。
自分の得意分野であれば、どうしても偏った視点になってしまい、全体像が見えづらくなってしまうとのことでしたが、そのために、なるべく苦手なテーマを選んで一から取材、調査をしているそうです。

今回のテーマは「中国」と「原発」ですが、著者はほとんど事前知識のなかったにも関わらず、たった半年の準備期間で連載をスタートさせたそうです。
それであのリアリティ。元新聞記者だから成せる業なのでしょうが、恐るべき調査能力です。

ただ、正直、小説としての完成度はあまり高くないように感じてしまいました。
メインの登場人物として登場する中国人の女性映画監督(揚)がいるのですが、その位置づけがなんとも微妙。
彼女のストーリーの軸は、「六・四事件(天安門事件)のドキュメンタリー映画を撮ろうと奔走するも、誰の協力も得られず苦悩する」というものです。

しかし、六・四事件で兄を亡くした鄧との邂逅で何かが発展するのかと思いきや、特に何も化学反応らしきものは見られませんでした。いったい彼女の存在意義は何だったのか・・・。
著者が当初描いていたプランでは、彼女も大きな役目を与えられていたけれども、連載を書き進めるうちに田嶋と鄧の関係が面白くなっていき、次第に彼女は脇役へ押しやられていったというところでしょうか。

とは言え、相変わらず小説の面白さは抜群です。
やはり仕事にプライドを持った人々の熱い言動を読むと、ぐっと気が引き締まる思いがします。
本作では、スリリングな展開も見所です。クライマックスの怒涛の展開は、興奮しっぱなしでした。

『ベイジン』は、一番好きな作家、真山氏の作品の中で唯一、読み残していた作品でした。
これでしばらくは、著者の小説を初見で読む興奮を味わえないのかと思うと、ちょっとさびしいです。
『グリード』が発売したばかりですが、早く次の作品が出るのを楽しみにしています。

category: 小説・エッセイ等

thread: オススメの本の紹介

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グリード/真山仁  


グリード 上グリード 上
(2013/10/30)
真山 仁

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ハゲタカシリーズ、前作から4年半ぶりの第4弾です。
このシリーズを朝の通勤時間に読むと、ほどよい緊張感が体を巡り、身が引き締まるのを感じます。

単行本に挟み込んであるチラシに、著者自身による本作品への寄稿文が掲載されていました。
タイトルは、「強き男、その名は、鷲津政彦―」。
日本の待望する“強き男”は、まさに 本シリーズの主人公である鷲津のような男であると謳っています。
今作でも鷲津は、緻密かつ大胆な戦略をもとにしたスリリングな買収劇を魅せてくれます。

小説の舞台はリーマンショック前夜のアメリカ。
真山氏は、相変わらずの徹底した事前調査ぶりで、実在する企業、人物を登場させながら
日本のハゲタカが、瀕死の巨人となったアメリカの弱みにつけ込むという挑戦的な物語を描いています。

難しい社会問題に真っ向から切り込み、骨太なストーリーに仕立て上げるのが真山小説の真骨頂。
本作も、未曾有の金融危機をテーマにした重厚な経済ドラマに仕上がっています。
オススメなのが、先日紹介した『外資系金融の終わり』(藤沢数希著)とセットで読むこと。
リーマンショック前後の金融に関する知識と問題点をより深く理解することができるはずです。

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何が金融危機を招いたのか。
これは勿論、一つに絞れるものではなく、多様な要素が複合的に絡み合った結果であり、
様々な角度から検証することで、多くの反省点を見出すことができます。
少しだけ、「金融危機の原因」として一般的に説明される事柄について説明しておきます。

まずは、政府による住宅購入促進キャンペーンを挙げることができます。
この政府によるキャンペーンにより、信用度の低い低所得者層も、住宅を担保にしてサブプライムローンという住宅ローンを借りることができるようになりました。
格差の大きなアメリカにおいて、苦労人がマイホームを持てるというのは、まさに「アメリカン・ドリーム」。
目の前にそんな誘惑をぶら下げられたら、舞い上がらずにはいられません。

しかし、やはりそこには落とし穴があったわけです。
返済能力のない人でも住宅ローンが組めるわけは、住宅の価格上昇が続くと誰もが信じていたから。
アメリカでは戦後60年、住宅の価格は下落したことがなく、この先も上昇し続けるはずだ。だから返済できなくなっても、住宅を売却すれば資金を回収できる。そんな過信がありました。

サブプライムローンは証券化され、MBSなどと呼ばれる住宅ローン担保証券がつくられました。
そんな危うい証券化商品やその派生商品に対して、格付け会社はこぞって高い格付けを与えていました。
その理由としては、前述の住宅価格上昇への過信に加えて、リスク分散のための仕組みが複雑すぎて、ほとんど誰も理解できていなかったということも挙げられます。
誰も彼も目が曇っており、正しくリスク判断ができない状況になっていたのです。

これらの複雑な仕組みは、世界中の金融機関の様々な金融商品に組み入れられながら販売されました。
しかし、アメリカの住宅バブルがはじけると、一気に債権不履行のリスクが拡大。
連鎖的に多くの金融機関が危機的状況に追い込まれ、ベア・スターンズという投資銀行が破綻します。
そしてその数か月後、名門投資銀行であったリーマン・ブラザーズが倒産しました。

このとき、米財務長官ヘンリー・ポールソンは、危機的状況にあったリーマンについて「公的資金は投入しない」と宣言し、これが実質的にリーマンの破綻を決定的にしたと言われています。
しかし、リーマン破綻の影響で連鎖的に他金融機関が危機に陥っていく様相をみて、あわてて方針を転換。
その後は世界の金融システムの崩壊を防ぐため、大手金融機関に対して巨額な税金を注入しています。

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金融危機について押さえておきたい知識を書いてみました。
本作を読めば、こうしたリーマンショックの背景知識もドラマティックに理解できるはずです。
そして著者は、この金融危機の背景には上記のような直接的な要因の他に、もっと根深いアメリカの価値観があるということを作品内において提示しています。

それは、本作品のタイトルである「グリード」つまり「強欲」に関する価値観です。
「強欲は善だ」とは、かの有名なゴードン・ゲッコー(映画「ウォール街」の登場人物)の言葉ですが、
真山氏は、そうしたアメリカの価値観を理解しなくてはならない、と雑誌のインタビューで語っていました。

日本の社会をエセ資本主義という人もいますが、アメリカは本物の資本主義社会です。
つまり、弱肉強食の世界。自分の身は自分で守る。敗者に対する国の加護なんてありません。
アメリカという国家の成り立ちを考えれば、当然のことかもしれません。
だから魅力的なのであって、だからイノベーションが生まれるのだ、とも言えるでしょう。
そういった価値観が良いのか悪いのかという問題はともかく、このグローバル社会において
世界の頂点に君臨するアメリカがそうした価値観を前提にしているということは心しなくてはなりません。

すこし脱線してしまいましたが、アメリカの「強欲」は、まさにそうした厳しい社会の中で必然的に生まれたものであって、本作品では、その「強欲」が先の金融危機を招いたという側面を示しています。
中国を相手にした『レッドゾーン』もそうでしたが、いわゆる「お国柄」の本質的な部分をフィクションの世界で表現することのできる著者の才能は、本当に非凡であると感じます。次回作にも期待しています。

category: 小説・エッセイ等

thread: 紹介したい本

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オレたち花のバブル組/池井戸潤  


オレたち花のバブル組 (文春文庫)オレたち花のバブル組 (文春文庫)
(2010/12/03)
池井戸 潤

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テレビのない暮らしをしていると、それはそれで充分に快適なのですが、
どうしても世間の流行に取り残されていくという不安は拭えません。
それでなくても職場は、社外の流行とは無縁の時間が流れています…。

僕にとって、世間の流行を掴む頼りとしているのは3つだけ。
「YAHOO!ニュース」と「本屋の棚」と「新聞」です。笑

そして、そのいずれも「半沢直樹」の大ヒットを告げています。
ここ最近は、YAHOO!ニュースで「半沢」あるいは「倍返し」という文字を見ない日はないほどです。

そのYAHOO!ニュースで読んだのですが、大ヒット中のドラマについて、
著者は「原作は現代版時代劇であり、その心をよく汲み取ってくれた」と言っているそうです。
たしかに、勧善懲悪という言葉がふさわしい物語です。
その意味する所を、原作しか読んでいない僕が少し紹介してみたいと思います。



本作は「半沢」シリーズ第二弾。

前作は半沢個人の復讐劇が中心でした。
が、本作の半沢については客観的な描写がほとんどです。
そのため、半沢の心の中で激しく煮えたぎる憎しみや怒りを拝める場面がなく、少し残念です。

その代わりと言っては何ですが、半沢の信念が2回ほど、次の言葉で表現されます。
「オレは、基本は性善説だ。だが、やられたら、倍返し」
もう、善玉ヒーローという役回りを完全に自認しているようなセリフです。笑

では本作では、「善」の半沢が懲らしめる「悪」は一体どこにいるのか。
それはもう、銀行の内外にうじゃうじゃと潜んでいます。まさに四面楚歌。
そして、いやらしいのが、それらが裏で手を取り合っているということ。

B’zの「Liar! Liar!」の歌詞が頭に浮かびます。
「先生はママと 政府は火星人と 警察は悪い人と
 僕の知らないとこで とっくに ああナシがついてる それってダンゴウ社会」

勿論、一人残らず半沢がとっちめる事になるのですが、その痛快な逆襲劇を見ていると
「ざまぁみろ」と感じるのは、やはりプロの小説家の成せる業なのだろうと思いました。

半沢を突き動かしているのは、「正義は我にあり」という頑固な信念です。
半沢のような身勝手な振る舞いを社会人がすることは、現実社会ではあり得ません。
フィクションだからこそ、その「懲悪」が実現され得るのであり、読者にカタルシスを与えるのでしょう。



ちなみに「半沢」シリーズのタイトルを並べてみると、『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』と、やたら“バブル時代に入行した世代”を全面に出しています。
まだ第三弾は読んでいないのですが、おそらく「バブル入行組」という側面が最も色濃く作品に反映されているのが、この第二弾ではないかと思います。

本作で描かれるのは、まさに「バブル入行組」の苦悩。
タイトルにつけられた「花の」というのは、紛れもなく皮肉です。
その意識が、中盤で語られる半沢の同期の渡真利という友人の口から語られます。

「オレたちバブル入行組は、ずっと経済のトンネルの中を走行してきた地下鉄組なんだ。だけどそれはオレたちのせいじゃない。バブル時代、見境のないイケイケドンドンの経営戦略で銀行を迷走させた奴ら――いわゆる“団塊の世代”の奴らにそもそもの原因がある」
「オレたちバブル入行組は団塊の世代の尻拭き世代じゃない」

それは「半沢」シリーズに通底しているテーマの一つでもあります。
無責任な「団塊の世代」の悪弊が根付いた組織の中で、鬱憤の溜まった「バブル入行組」の不平不満。
その捌け口が、悪いもの退治――。そんな見方をする事も可能です。

バブル時代、そして失われた10年、20年。その時代の格差を感じる事ができます。
日本経済の低迷期を生き抜く中で、鬱憤が胸の内に澱のように溜まってしまった社会人の皆様。
そんな方々が、スカッとしたい時に読むのに最適な一冊です。

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オレたちバブル入行組/池井戸潤  


オレたちバブル入行組 (文春文庫)オレたちバブル入行組 (文春文庫)
(2007/12/06)
池井戸 潤

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世のブームにほだされて、つい買ってしまいました、半沢直樹。
「やられたらやり返す」で一躍有名となった、一人の勝気な銀行マンの復讐劇の話です。

主人公の半沢直樹が入行したのは1988年のバブル時代。
そして舞台はその16年後、つまり2004年の銀行です。

作品内では半沢がバブル時代を思い返すシーンが何度かあります。
返済の見込みよりも温情が優先される。
そんな甘い時代もあったなぁ、と思い返す読者もあるのかもしれません。
しかし、バブル時代の銀行不倒神話は過去のものとなり、銀行融資は中小企業の味方ではなくなりました。
まさに「晴天に傘を差し出し、雨天にとりあげる」という、銀行の冷徹とも言える現在の姿が描かれています。
(ちなみに、著者は元銀行員。それもあって細部のリアリティは読み応えがあります。)



半沢は思った事を我慢できずに口に出してしまう、よくある“出世できない”タイプの人間です。
自分に理があれば物事は突き通せると信じており、不合理な仕打ちを受けると黙っている事ができません。

上司のミスの責任を理不尽な形で被らされる状況に追い詰められると、当然のごとく反発します。
時に強い怒りを露わにし、時に相手の裏をかいて反撃し、「やられたらやり返す」という姿勢を崩しません。
その姿は痛快で、読んでいてカタルシスを得られること請け合いです。

物語の筋は、復讐劇という言葉に尽きます。
酷い仕打ちを受けた相手には、罪を認めさせ、土下座をさせなければ気が済まない。
じわじわと包囲網をつくって締め上げて、最後に対面で情け容赦なく骨の髄まで追い詰める。

しかし終盤、ラスボスの一人に対面した時、ある想定外の出来事から半沢の心で「シーソー」が上下し始め、冷徹さが少しばかり揺れ動きます。
そこで、半沢は敵に対して「条件次第では見逃してやってもいい」と交換条件を提示します。
それは予想外の条件ではありましたが、本作品を象徴している条件とも言えます。
一つの見物ですので、ぜひ本書でお確かめください。

社会派小説の多くが、終盤に向かうにつれ複雑な様相を呈するものですが、本作品は終始敵と味方がわかりやすい構造になっているので、筋を追うのに混乱する事はありません。
理不尽な目にあわされる主人公に感情移入しながら読んでいけば、最後に大きなカタルシスが得られるような仕組みになっています。
社会の不条理を感じながらも、鬱憤を晴らせないでいる社会人の方には特にオススメです。

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下流の宴/林真理子  


下流の宴 (文春文庫)下流の宴 (文春文庫)
(2013/01/04)
林 真理子

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職場の飲み会で「出世したい」と言ったら、「今の若者にはその意気がない」と言って褒められました。
努力を疎んで、上昇志向を持たない若者が増えているというのはよく聞きます。
意欲を見せるだけで一目置かれるというのは、なんと良い時代だろうと思いました。笑

本作は、ある意味でそんな時代を映した作品です。
ざっとあらすじを書くと、以下のとおりです。

自分の家庭は上流とは言わないものの「中流」である。
本作の主役である主婦は、そうした思いが強く、「中流」家庭であることに誇りを持っています。
しかし、息子は母親の期待を裏切って高校を中退し、家出状態。
その息子が、「結婚するつもりなんだ」と言って同棲相手の女性を家に連れてきます。
息子は二十歳でバイト暮らし。相手の女性も二十二歳で同じくバイト生活。
お金がなくても二人で暮らしていれば、それだけで幸せなのだと息子は満足げに語ります。
そんな二人に対し、プライドの高い母親は怒りを抑え切れない。特に、相手の女性の「育ちの悪さ」が気に入らず、自分の家庭が「下流」(≒「ヤンキーの家」)に落ちてしまうことを恐れ、何としてでも結婚を阻止しようとします。
そんな価値観に縛られた主婦と、見返してやりたい息子の彼女とのバトルが話の大筋となっています。

新聞の連載記事であり、連載中から読者の反応が大きく、「どうしてウチの家庭の事情を知っているのか」といった問い合わせが相次いだそうです。本はたちまちベストセラーとなり、ドラマ化もしたそうですね。

本作品は、“世代間の価値観の対立”というのが一つのテーマとなっています。
子の世代の価値観に戸惑い、決して認めたがらない母親の苦悩と滑稽さがひしひしと伝わってきます。
空回ってばかりの奮闘姿が、これでもかと言うほど痛々しく描かれています。

一方で、息子は現代の典型的な「草食系男子」です。とにかく欲がない。
「何の意欲も持たない、将来のことも考えていない、お金もいらない」息子は、呆れるほど「覇気がない」。
親世代の価値観では、「二十歳の男の子だったら、覇気を持ってないはずない」のですが、それが息子の世代にはまるで通じません。
自分との結婚のために努力する彼女に対して「努力する人って重苦しい」とまで言ってのけます。

登場人物は、欠点のある人ばかりですが、息子の彼女の健気さが最も読者の心を掴むと思います。
結婚したい彼氏の母親に「育ちの悪さ」ばかりを責められ続け、ついに怒った彼女は「医者になる」と宣言。
そこからは有言実行を掲げ、人が変わったように猛然と勉強を始めます。
必至で頑張る過程で言った一言が、とても印象深いです。
「一生懸命何かやるとき、やっぱりプライドっていうもんは自然と生まれてくるさー」(沖縄弁です)

その「プライド」が決定的に息子との距離を広げることになるのですが、僕自身は、こうした「プライド」が生きていく上で必要不可欠なものだと思っています。
努力によって「プライド」を得た経験のない息子は、きっと将来、後悔する時が来るのではないか。
限りある人生を考えると、僕はどうしてもそう思ってしまう立場の人間です。

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アスクレピオスの愛人/林真理子  


アスクレピオスの愛人アスクレピオスの愛人
(2012/09/28)
林 真理子

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アスクレピオスとは、ギリシャ神話に登場する医神のこと。
そのアスクレピオスの持つ蛇の巻きついた杖は、WHO(世界保健機関)のシンボルマークとして用いられており、本作品はWHOに勤める女医の話です。

あらすじとしては、その有能で魅力的な女医に魅了される男たちの物語。
有名美容外科医、病院理事長、若い小児科医の主に三人の男の視点から主人公が描かれます。
主人公の女医ですが、とにかくモテる。そして、性に開放的。
常に死と隣り合わせの現場で働いているからこそ、動物的で本能的な性質が身についているのかもしれません。
それでも仕事の現場の描写から、彼女が何より仕事に対して最もエネルギーを注いでいる事がうかがえる。世界の専門機関で管理職として働く優秀な人間であるというのが、彼女の魅力を一層引き立ています。


以前行った著者の講演会でその本の構想段階の話に触れられており、言わば“執筆の舞台裏”を知っていたので、その出来上がりを見なければと思い購入しました。
どうやら出版社の編集者に“現代版白い巨塔”を書いてみようと唆されて書き始めたものらしく、慣れない医学用語と必死に格闘している著者の姿が文章の端々から想像されます。
著者は、あらゆる専門家とのネットワークがあると言っていましたが、本書では実際に医療に携わる専門家や医療裁判を扱う専門家ならではのネタが散りばめられており、人脈作りの才能が直接的に作品に活かされている事がよくわかる。

ただし、WHOの世界各地での仕事や国内外の医療事情などについて、知識としては勉強になるものの、そのために本筋がやや霞んでしまっている印象は否めません。
WHOの仕事や医療裁判など、扱っている事柄は派手で充分に興味深いのに、それを物語の展開に上手く吸収できず、小説の核心にまで昇華させる事ができていないように思います。
結局、医療をテーマにしてまでも、扱いたかったのはよくある愛人問題に過ぎないのか、という印象に収まってしまっているのが残念です。

ただ、魅力的な女性を描かせれば、さすがに著者の独壇場だと思う描写力です。
特に女医というのは、それだけで神秘的で魅力的な存在です(僕の偏見かもしれませんが)。
主人公の魅力に翻弄されながら、医師特有の雰囲気に包まれた長編を一気に読み終える事ができました。

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幸せの条件/誉田哲也  


幸せの条件幸せの条件
(2012/08/24)
誉田 哲也

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僕の敬愛する椎名林檎女史が「最近よかった小説」に挙げていたので、以前から読みたいと思っていた小説です。テーマが農業繋がりと言う事で、『黙示』(真山仁著)に続けて読破。

世界規模の視点から日本の農業問題を鋭く捉え、“最後の切り札”とでも言うべき劇薬を提示した『黙示』に比べ、本書は実際に農業を営んでいる現場から、農業そのものが抱える問題や農村社会の在り方について直視しています。
テーマは共通する所も多いですが、二冊を併せて読むと農業問題に関してより多角的な視点が得られるのではないかと思います。例えば、バイオエタノールなどは『黙示』では扱われませんでしたが、エネルギー問題を考える上でも忘れがちな大事なテーマであります。

どうしても『黙示』と比べてしまうと、ややヌルい印象は拭えませんが、農村の人々の包容力や解放的な性格などが微笑ましい描写と共に描かれています。
都会暮らしの人間に農業の現実を教えてくれるという点では優れた小説だと思います。今話題の『奇跡のリンゴ』などもその類なのでしょう。

文章もとても読みやすい。随所でみられる「例え」がわかりやすく、農業の風景を見たこともない僕のような人間でも何となく農作業のイメージができるように配慮されています。
溌剌とした女子が主人公という意味では、著者の『武士道』シリーズを彷彿とさせます。ただ、充実感たっぷりの『武士道』シリーズより、残念ながら完成度が劣るように感じました。
(特に、震災を無理やりストーリーに組み入れ、主人公の動機に利用した点などは、個人的にはあまり戴けないです。)

本書を読む限り、バイオエタノールが今後のエネルギー問題や耕作放棄地問題などの理想的な解決策とは思えませんが、「自給自足」というテーマを大事にする姿勢は納得できます。
分業化とグローバル化の進んだ資本主義社会において、「自給自足」は完全に逆行するものではありますが、ある意味、究極のリスク管理なのかもしれません。輸入が途絶えたとしても、資本主義が崩壊したとしても、「自給自足」が実現されていれば、怖いものはありません。
今の時代こそ、自己防衛の手段として「自給自足」という価値観が見直されるべき。そんな気運の高まりがあってもおかしくないだろう、と考えさせられました。

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黙示/真山仁  


黙示黙示
(2013/02/22)
真山 仁

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真山氏が原発問題に続き、農業問題に切り込んだ本です。
農薬メーカー、ミツバチ養蜂家、農林水産省の三者の立場から、相変わらず鋭い視点で描かれています。出版されたのは今年二月でTPP、原発事故の問題なども反映されています。

内容は非常に地味です。だけど国家、世界規模の視野で農業を考える構想は壮大で、多くの日本人に欠けている視点が詰まっています。
特に、世界の食糧危機が迫り、日本の安全な農業が中国商社に狙われている、なんてマクロの視点を持ち合わせている日本人はどの位いるでしょうか。
本書の言葉を借りれば、食糧問題に関しては「日本は完全に世界標準から周回遅れしている」状況にあります。
食糧難の時代になれば、日本への食糧の輸入が絶え、さらに国内の食糧も中国などに買い漁られる恐れもある。本書はそんな危機的状況の可能性を提示して、警告を鳴らしています。
相変わらず減反政策を続け、TPP問題が日本農業の最大の危機と喘ぐようではダメだと言う強いメッセージが伝わってきます。

そして、中盤辺りで一つの劇薬のような解決方法が提示されます。
それまで並行して進んでいた主要な三者の話がある一点に収束されゆく予感がもたらされ、小説は一気に面白味を増します。
そこで加えて、真山氏お得意の「政治」と「ビジネス」が姿を現し始める。やはり人を動かすのに手っ取り早いのは、そうした手段を持つ事なのでしょう。



本書でも、著者の他の作品と同様、相変わらず様々な社会問題が散りばめられています。
TPP、自給率、放射能問題、農薬、養蜂、CSR、遺伝子組み替え、知財問題、気候変動、人口爆発、マネー資本主義の拡大、などなど。
そして、それらが全て独立した問題ではなく、有機的に関係し合っていることを教えてくれます。
社会問題の捉える時に一面だけを見てはならない、ということが学べます。

本書の筋とは離れますが、一つの事例を異なる立場の視点から描いているので、逆の立場から見た時にハッとさせられる経験が、著者の本を読んでいるとよくあります。
(本書内では対立する立場の人間が互いを理解し合うことの重要さが説かれています。)
一方が曇りない情熱に突き動かされて調査や活動を行っていても、別の立場からして見れば迷惑千万な話で乱暴狼藉と片付けられてしまう。こうした話は実際にありふれた事だろうと思います。
特に仕事の場合は、どうしたって物事を自らの立場の視点でしか考えられない事があります。
面倒だという思いから、相手の要求を無下にするなんて事も職場によっては日常茶飯事でしょう。
それが無意識となってしまうのが怖いです。
まだ二年目なので会社の考え方に染まっているとは思わないですが、そうした意識に自覚的であり続けたいと思います。

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新世界より/貴志祐介  


新世界より(上) (講談社文庫)新世界より(上) (講談社文庫)
(2011/01/14)
貴志 祐介

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文庫本で、上中下あわせて1400ページを超える大作です。
以前から気になっていたのですが、休日を利用して一気に読み進めました。
あらすじは、とても説明が難しいのですが、文庫本(上)の説明書きを引用します。

『1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖(かみす)66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄(しめなわ)で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力(念動力)」を得るに至った人類が手にした平和。念動力(サイコキネシス)の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた……隠された先史文明の一端を知るまでは。 』

あらすじを書こうとすると、どうしても魅力が伝わりにくいのですが、
この壮大な世界観は、読んでみないとわからないものだと思います。
内容の紹介と言うより、感じたことだけ書き残しておきます。



神の知恵を持つ天才の書いた小説、というのが率直な感想です。

世界観の設定がとても緻密で、とことんまで考え抜かれています。
どうやったら、こんな世界を作り上げられるのだろうか。
実に巧みに構成された壮大な仮想世界は、人間が理屈で考えられる最大限まで想像を働かせた世界のようで、人類の叡智を凝縮した感すらあります。
著者は、この世界を築くのに大量の文献にあたったことと思います。
治世について、心理について、進化について、様々な分野の研究者の学説を効果的に援用しているため、その描写や考察はこの上ない説得力を持っています。

また、物語としての構成自体も素晴らしく、これだけの長編でも全く飽きが来ません。
登場人物らの危機を繰り返し描きながら、少しずつ社会の闇と不安を暴いていく。
著者の専門分野であるホラーの手法なのか、恐怖により続きを読ませる手法がとても効いています。気づき→不安→恐怖、と言う順番で、この後どうなるの? と続きが気になって仕方ない状況に引き込まれます。

色々と考えさせられました。
が、こんな大作を前にすると、考えた事も文字に書き起こした傍から陳腐化していくような気がしてしまいます。充分な表現力を身に付けるまでは、心の中で大事に育てておこうと思います。

構想30年とのことですが、これほどの傑作を見事に完成させる才能が本当に羨ましいです。
若干グロテスクな描写が見られることと超長編であることが多少読む人を選ぶかもしれませんが、あらゆる種類の好奇心をそそる無敵の面白さを持つ本として、ぜひとも多くの人に挑戦してもらいたい小説です。

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最終便に間に合えば/林真理子  


最終便に間に合えば 〈新装版〉 (文春文庫)最終便に間に合えば 〈新装版〉 (文春文庫)
(2012/07/10)
林 真理子

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林真理子氏による短編集。

野心のすすめ』によると、メディアに出ずっぱりだった頃、
執筆業を疎かにしているという世間の声が大きくなったそうで、
そこで何くそと思ってテレビ活動を中止し、執筆に専念。
そして見事直木賞を受賞してみせたそうです。
そんな時期に書き上げられた作品群がこれ。

文庫本自体は短編集となっており、表題作を含め、
先述した直木賞を受賞した作品が二作おさめられています。
以下の感想文は、その表題作である「最終便に間に合えば」について。



話の筋だけ追えば、ありきたりの元カップルの話です。
貧乏性の男と母性本能に負けてしまう女。
その二人が7年という時を経て再会し、明らかに誘っている男と
一夜を共にするか否かの駆け引きが繰り広げられます。

そこで男が条件を出します。
空港に向かうタクシーが、飛行機の最終便に間に合えば諦める。
もし間に合わなかったら一泊すれば良い、と。

登場するのは男女とタクシー運転手の三人しかいないのですが、
この運転手の存在が大きいです。
後部座席の男女の会話が聞こえていないはずがないのに、
それでも車を急がせようとする。
しかも男は、女の乳房をいじくりまわしている。
何とも想像するに、運転手に同情的な気持ちが生じます。

口数の少ない運転手を一人置くだけで、
男女二人のやり取りに客観的な視点を与え、滑稽さを引き立てています。
この短編の構成の妙であると思います。



一つ一つの些細な行動から、気持ちを映し出し、その文章に絶妙な比喩を添える。
僕の読書体験の中では、こうした作業において著者より巧みな作家を知りません。
直木賞受賞作なので、僕が言わずとも優れた作品であるのは間違いないのですが、
本作には著者の才能が最も良質な状態で詰まっていると感じます。

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ぼくは勉強ができない/山田詠美  


ぼくは勉強ができない (新潮文庫)ぼくは勉強ができない (新潮文庫)
(1996/03/01)
山田 詠美

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僕の大好きな名作です。

主人公は高校生の男子。
勉強は得意ではないが、女性にもてて、バーで働く年上の彼女と交際しています。
皮肉をよく吐きますが、憎めないキャラで、その言動は何とも格好いい。

自分の価値観を大事にする彼は、
成績トップの同級生の嫌味に対して、こう切り返します。
「でも、おまえ、女にもてないだろ」
強烈な一言です。ある意味、世界をひっくり返すほどの破壊力を持った一言です。
その後、その同級生の成績はがくんと落ちてしまいます。

彼は別の場面でこうも言っています。
「しかしね。ぼくは思うのだ。どんなに成績が良くて、りっぱなことを言えるような人物でも、その人が変な顔で女にもてなかったらずい分と虚しいような気がする」

真理だと思います。しかし、僕らがどこか心の中で蓋をしている真理です。
いくら理論武装をしたって、異性にもてる人間の前では負け組なのだ。
ちょっとした発見をしたようで、嬉しくなりました。

まっすぐに生きようとする主人公の男の子の考える事は、
純粋に哲学的で、大人ぶっており、そして意外と打たれ弱い。
社会の固定観念にささやかな疑問を呈する様子は痛快です。

何より著者のユーモラスな文章力が秀逸で、読んでいて気持ちが良い。
その上考えさせられてしまうのだから、文句のつけようがありません。



Amazonのレビューをちらっと覗いてみたのですが、どうも賛否両論あるようです。
好き嫌いの問題であると思いますが、僕としては、
プロ作家ならではの新鮮な物の見方や価値観を提供してくれる話は大好きです。

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変身/東野圭吾  


変身 (講談社文庫)変身 (講談社文庫)
(1994/06/06)
東野 圭吾

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まだ読んだことのない人には是非読んでほしい。
誰に対してもオススメできる東野圭吾氏の傑作です。

脳移植手術を受けた主人公の青年の性格が徐々に変容していく―
詳細は書けませんが、スリリングで衝撃的なお話です。
無尽蔵な執筆才能を持つ著者の作品群の中でも一番好きな小説だったりします。

オススメする理由の一つ目が描写力です。
心が変化していくという、繊細で難しい過程が描かれているのですが、これが非常に上手い。
変化が言動に表れる場面の描写が秀逸で、非現実的な話なのに、とても感情移入できます。
他の著書では素っ気ないように感じる著者の文体ですが、この小説に関しては全体を覆う陰湿さに合わせた文体が意識されているように感じます。

二つ目は物語の完成度の高さです。
個人的に、中盤辺りの主人公の心情にはとても感情移入をしてしまいました。
そういう時、文章を読みながらラストを迎えたくないなぁという気持ちになってしまいます。
中盤が優れた小説ほど、オチで作品の質を台無しにしてしまうことへの不安を募らせてしまうのです(随分とひねくれた性格ですいません)。
しかし、良い意味で予想を裏切ってくれるドラマティックなラストには、非常に満足。
勝手に不安を抱いてしまったことを反省しました。

最後に三つ目を挙げるとすれば、考えさせる作品であるということ。
優れた小説には必ずと言っていいほど考えさせられるものがあります。
本作品も例外ではなく、自分の脳や自分の性格について様々な事を考えさせられました。

名作の書評は一見にしかず。ぜひ一度、読んでみて欲しいです。

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